「ダイダロスブリッジが立ってから、もう、あれから100年経ったって言うのが凄いよな〜」
まぁ、俺達は当初は生まれて無かったんだけどな…。」
「俺達の住んでる、このサンシャインシティからだとダイダロスブリッジは見えないんだよなぁ。」
彼は、観光ガイドの写真を見て呟いていた。
「おい、聞いてるのかよ? 遊波……」
「あぁ、ちゃんと聞いてるよ頼雅(ライガ)……」
どうも、しっくりこない自分がいるような感じだ…。
なんせ、ダイダロスブリッジって言われても100年前の建造物だ。
俺達は生まれてもいないし、知る由も無い…。
頼雅がむきになるのも分からなくもない…かつて、伝説のデュエリスト(不動 遊星)がいたとされる場所。
彼はシグナーで、今のこの世界があるのも彼とその仲間のおかげと、表向きには公表されないが、影ではそう語り継がれている。
そう言えば同じような話を、昔、俺が小さかった頃に父さんから聞かされた時もそうだった。
シグナーって実際なんだったんだろう……。
俺にも似たような事が起こった事が前にあった。それが何よりも気味が悪かった。
だから自分があまり好きになれなかった…。そのせいか、ここ数年友達もいなかった。
だけど、デュエルカレッジに通いだしてからは、いつの間にか周りには人が溢れていた。
父さんがいなくなった時も丁度その頃だった…。
「あれから…7年か…。」
頼雅は不思議そうに俺を見てきた。
「あぁ、遊波のおやじさんがいなくなった時の事か……」
「まだ、見つからないのか?」
俺の父さんはセキュリティに勤めていた。
「お父さん…。また、お仕事?」
父は軽く口を開きにっこり微笑んだ。
「あぁ、そうだよ… 遊波や母さんの為さ……。」
俺もそんな父さんが格好良いと思った。
「セキュリティって悪い人を捕まえるお仕事なんだよね!すごいやー!!正義だね!お父さんは!」
父さんは笑いながら返した。
「はっはは…正義って言葉を知ってるのか?遊波は……。」
「でも、何が本当の正義かわかるか?それを見つけるのが今の遊波の仕事だ…。」
「きっと遊波にも分かるときが来るさ……」
―――――そんなある日
残業で、父さんの帰りを待っていた時の事だった。
父さんの趣味で置いてある、本棚のある部屋で物音がした。
ガサゴソ…
部屋のドアは少し開いていて、月の光がそこから溢れていた。
そこで見た光景は、今でも言葉にするには恐ろしいくらいの事だった…。
まるで、テレビやゲームで見るような悪魔が、そこにいた……
恐怖で足がすくんだ俺はその場から動けなかった……
そして偶然にも、右手に握っていた絵本を思わずすり落とした。
カタン……
悪魔は本の落ちる音で、こちらに気づきこちらに近づいてきた。そしてその背後にもう一人の影が忍び寄って来た。
何者かの手が、俺の右肩に手が触れた。
自分ではもうだめだとそう思った瞬間だった。その時…。
「ただいま、大丈夫か?遊波?どうした、そんな怖い顔して……」
「はっはは…怖い夢でも見たのか?」
そこには父さんの姿があった。俺を見て、いつも通りに笑っていた。
「そんなに面白いのかよ?父さんが帰ってくるのが遅いから!!」
父さんは困った顔で語りかけてきた。
「すまんな、寂しい想いをさせて……」
この時までは父さんが好きだった… いつも父さんの笑顔が印象的だった…。
「遊波?…おい? 大丈夫か?」
と、頼雅の声で、俺は我に返っていた…。
「すまない頼雅…。 今でも思い出すんだ…。あの時の事を…」
頼雅はすこし表情をしからめた。
「それだけ好きだったんだろ…おやじさんの事が……」
「お前らしくないぞ!元気がとりえ、そして正義思考がお前じゃないか!」
「いつも通りデュエルしたら気分も良くなる!」
俺はデュエルが好きだ、そして何よりも自分のデッキを信じている。
かの、不動 遊星が信じたように…。「わるかったな、ようし! 行くか!頼雅! 俺達のデュエルロードに!」
頼雅と、良く行くデュエルスポットがある。それがこのサンシャインシティにあるデュエルロードと呼ばれる所だ。
「さ〜てとぉ〜、暴れるか! 俺の野生獣戦士(ワイルドビースト)が雄たけびを上げるぜ!」
頼雅のデッキは獣戦士で構成されたビートダウンデッキで、彼もまたこの地ではかなりの腕の立つデュエリストだった。
少しして頼雅と俺はいつも通り、デュエルロードに足を運んだ。
「さすが今日も大勢いるねぇ〜。よーし片っ端からデュエルだ!!負けても勝っても恨みっこなしだ!」
「あーデュエル最高ぅおおお!!!」
いつも通り頼雅はテンションが高い。それほど彼はデュエル好きだ。
「行くぞ!俺のターン、速攻で行くぜ!!手札より魔法カード「地割れ」発動!!フィールド上の一番攻撃力の低いモンスターを破壊する!!
俺の場にモンスターは存在しない、よってお前の場の霞谷のファルコンを破壊する!!さらに、狂気のワイルドタイガーを特殊召喚!!」
そうこうするうちに頼雅はデュエルを始めていた。
デュエルディスクの発展型、デュエルドライブシステムが映像を作り出し、各地に設置されているデュエルサーバーが
映像に音をつけるシステムになっている。これもあの遊星粒子の発端から科学者達が開発したものだった。
これを見れば分かるように、おかげでデュエルは社会にまで影響を与えるものとなっていた。
今や、採用試験にデュエルが必要な所があるくらいだ…。
おっと、これは頼雅が有利だな…。
「自分の場にモンスターが存在しない場合、このモンスターは手札から特殊召喚できる!!」
「さらに、手札より魔法カード、ワイルドエナジーを発動!!これにより自分の手札の獣戦士を任意の枚数墓地に送る。
送った枚数分1体に付き、狂気のワイルドタイガーの攻撃回数を増やせる!!」「俺は手札の幻獣ワイルドホーン3体を墓地に送る!よって、狂気のワイルドタイガーは4回攻撃を行える!!」
相手は驚いた表情で頼雅を見る。
「バカな!……合計4回の攻撃だと!? ありえん!!」
いつも通り頼雅は速攻戦法で相手を倒していた。
目線を少し右にずらすとそこにもデュエリストがいた。
「ここでは見かけないデュエリストだな……」
デュエルを終えた頼雅が俺の横でそう呟いた。
―――――
次回、第1話 悪魔との契約者
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